田坂広志「死は存在しない 最先端量子科学が示す新たな仮説」
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本が売れないというけれど売れやすいものが2つある。
1つは~全史とか膨大な量をアーカイブ的にまとめたもの。音楽関係でいうとディスクガイドやラジオ番組のまとめとか変わった視点で音楽史をまとめた本が増えている。
もう1つは「死」にまつわる本。題材にしたものだけでなく高齢な人のエッセイや作品、亡くなった有名人の本とかも「死」への興味だと思われる。
本書、田坂広志「死は存在しない 最先端量子科学が示す新たな仮説」は2022年10月(もう1年前だ)に本屋で見かけた時はスピリチュアルな打ち出しが苦手で買わなかったんだけど著者が原子力工学専門の多摩大学名誉教授ということもあり結局年末の12月に買ったらその時点で5刷りだった。
著者は科学者で死後の世界など存在しないと考えていたが自身が経験した不思議なことを科学的に解釈していくと量子力学の現時点での理解と重なることが多かったそう。
物体は粒子で出来ているが波の性質、波動でもあるというのは聞いたことがあるかもしれない。
光でもなんでも物体は粒子と波動の2つの性質を持つことを現代科学では説明出来ていない。
人間が話したり意識を持っていることも脳がすべてを判断してるというわけでもない。
著者は物体の元の波動に意識の根源のようなものがあるのではないかと考えている。
何もない完全真空の状態から何かのきっかけでビッグバンが起こりこの宇宙が出来上がった。その源の完全真空の空間が偏在していて「ゼロ・ポイント・フィールド」と呼ばれている。完全真空の圧縮された濃密な空間で宇宙の源になった波動もそこが発祥。真空の世界では過去現在未来の区別もないからそこに今の世界や人々の行いすべての波動が記録されている、というのが著者の考え。
そこからは死後の世界についてだいぶスピリチュアルな解釈が続く。
「ゼロ・ポイント・フィールド」がこの宇宙すべての情報を記録するというのは言い過ぎとしても人間が考えたり感じたりした時の意識の波動が集団無意識のように漂っているのかもしれない。虫の知らせとか、たまたま同じことを考えていたとか、ふとある人のことを思い出したらその人から連絡が入るとか、そういった不思議なことも今後科学的に説明できるようになるかもしれない。
読んでいてスピリチュアルが過ぎると思ってしまうし、読んでみて個人的には死後の世界はないと思った。あるとしたら生きているうちに自分の考えたことや意識の波動が放射されて、それに感応する人もいるのかな、と。
真空の世界が偏在してるというのは宇宙の重さの7割は正体が見つかってなくダークマターと呼ばれているのと繋がるのかなと思う。数字の虚数と同じように空気のある現実の世界と目に見えない真空の世界が両立しているのかもしれない。
10年くらい前に読んだ宇宙の本でも、ビッグバンの頃はこの世界は14次元あったのが折りたたまれて今は11次元もしくは10次元で安定してるというのが定説になっているとのことだった。
3次元の世界しか把握できない人間が現代科学では理解できない、認識できない世界が存在するのは事実だろう。
くどいようだけど個人的には著者はスピリチュアルに過ぎると思う。「運気」にまつわる本も出している。なので「ゼロ・ポイント・フィールド」で検索するとスピリチュアル系の人のブログばかり出てくる。すべての人の過去から未来まで記憶するアカシック・レコードみたいな解釈なんだろう。
宇宙ができて137億年、地球は46億年。膨大だと思ってたけど今生きてる人間が宇宙や世界のことをここまで理解できるところまで進化したのは46億年では短いと感じた。実際既存の進化論では人間の進化は動物と複雑さに断絶がありすぎて現代科学的に説明がつかないらしい。これも脳が進化して波動への感応が高くなり集団無意識を共有しやすくなったからかもしれない。
願わくば人類は平和に進化していってほしい。
今の人類が知識を残すには言葉、文章で残すしかない。文書もデジタル化が進んでいるけどやはりリアルな紙で残さないと知識や歴史は積み重なっていかないなとも改めて感じた。デジタルだと記録媒体を読み込めるツールがなくなったら読めないし、雷や磁気嵐の影響でデータが飛んだりするかもしれない。
優れた研究や業績を上げた人も寿命はせいぜい80年と限られている。優れた文明が滅んだりしても文書が残れば研究は引き継ぎができる。今の文明が潰えることになったら2010年以降にデジタルでしか発表されていない成果は無かったことになってしまうのではないか。
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