小峰ひずみ「平成転向論 SEALDs 鷲田清一 谷川雁」
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今年読んだ人文学系の本で1番面白い。
小峰ひずみ「平成転向論 SEALDs 鷲田清一 谷川雁」
第65回群像新人評論賞の優秀作を受賞して2022年5月に単行本が発売された。
SEALDs(自由と民主主義のたまの学生緊急行動)の運動方針と解散を正当化した論理を論駁している。
論駁というと反論のようだけど著者としては影を見ることでSEALDsの活動の主体を浮かび上がらせると考えている。学生だからとか偏ってるとか果ては在日だみたいなSNSにあふれるヘイトや決めつけではなく見直していく。
著者は哲学カフェも行っているそうで、考えや言葉の意味を突き詰めSEALDsの運動を見直す観点が新鮮に感じた。答えや結論を先に求める風潮が強い中でまわり道をしながら考えを深めないとわからないこともある。
そこで参照されるのが鷲田清一、柄谷行人、和辻哲郎、戸坂潤、谷川雁なのだが論の補強のために恣意的に選んだ感じはする。言葉の定義が曖昧だったり説明不足なところも多く、何度か読み込むとより深く理解でき、考えも広がりそうだ。
序と終論は書き下ろしで、この序に著者の考えが簡潔にまとめられている。
その序に引用されているリチャード・ローティの引用が1989年の刊行なのに今の時代を言い当てていて素晴らしい。ローティの著作は絶版で高騰している。
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