鹿子裕文『へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』
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鹿子裕文『へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』
介護施設の話しで2015年にナナロク社から単行本が発売された頃から面白いと評判を見かけていて、2019年にちくま文庫で再刊された際に購入。
1991年福岡でお寺のお茶室を借りて始めたデイサービス「宅老所よりあい」が施設を増やし特別養護老人ホームを建てるまでの奮闘ぶりを描いている。
その奮闘ぶりが変わっている。
介護施設は儲かる仕事ではない。国などから補助金も出るがそれでもお金は足りない。なので不用品を寄付してもらってバザーを開いたり職員が手作りジャムを作って資金を集めたりする。自分たちが納得できるお金を集めるためだ。
施設も変わっている。個室に閉じ込めるのではなく昼間はお年寄りに広間に集まってもらう。広間にはキッチンもあり食事は手作り。
そして小規模な二階建てを活かして建物は木造。この辺りは介護職の人ほど驚くのではないか。そういう場に集まるのは個性的な人たちなのでそれぞれの奮闘ぶりが面白い。
著者はフリーライターでふとしたきっかけで2011年からよりあいと接点ができ世話人として外部から関わっていく。そしてよりあいの雑誌を作ることになる。その雑誌「ヨレヨレ」も小部数だったのに全国的に知れ渡る。自分もヨレヨレのことは知っていた。ヨレヨレも本書へろへろも小規模な個人書店が熱心に紹介していた印象がある。特養と雑誌を作るDIY精神が個人書店に響くものがあったのだろう。
介護に関係なく事業の立ち上げに関わったり予定してる人にも楽しめる内容だ。
表紙のイラストは小学生の頃のモンドくん。

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