金原ひとみ 「憂鬱たち」
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金原ひとみの小説は「アンソーシャル・ディスタンス」を買ったのが初めてだと思ってたけど積読の山から「憂鬱たち」が出てきた。文庫初版が2012年。帯の「菊地成孔」と「マジックリアリズム」に反応したんだと思う。菊地成孔の解説を読んだら昔解説だけは読んだのを思い出した。
単行本の発売は2009年。短編が7作収録されている。20代半ばの女性神田憂が主人公で、40代の髭を生やした男性カイズ、20代で背の高いウツイの2人の男性が各編共通しているのだけどすべて設定が違う。3人が俳優で別の話しを演じているようでこういうのは珍しい。掲載誌もバラバラ。
神田憂が精神科に行こうとして行けずに男性2人と出会うシチュエーションは共通している。そして神田憂の性的な妄想や実際の行為が描かれる。たまたま昨日官能小説を読んだところにこれかと思ったけど妄想のバリエーションの豊かさもリアルさもこちらの方が上だ。
読み終わってから裏表紙の説明を見たら「官能的ブラックコメディ」なんて書いてある。まあ俯瞰して見たらコメディなんだけど、意識の流れ的に主人公の独白が続くから、書いてる著者自身が性的なものも含めて妄想に耽りやすいことに悩んで書き出した作品のように感じた。
無駄のない筋肉質な文章で時にしつこく繰り返したりふと笑うような比喩が入ったり読んで楽しめる作品だった。
マジックリアリズムは事実を見たまま書いたら嘘みたいなとんでもないことが立ち現れることだからこの小説には当てはまらないな。関係妄想とか強迫神経症で精神科に行けない神田憂は全話同じ人物なのかもしれない。
1話目、店の酒を勝手に飲む雇われ店長が出てくるので飲食店のオーナーはイライラするかも。
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