鈴木大介「ネット右翼になった父」
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講談社現代新書の最新刊、ルポライター鈴木大介著「ネット右翼になった父」
著者の父が晩年正論やWillを読んだりヘイトスラングを口にしたりしていた。
著者は女性や子供の貧困問題についての著作もある。なのに父が自己責任的な発言をするのが理解できなかったようだ。また著者の実姉、つまり父から見たら娘もシングルマザーなのにシングルマザーに対する侮蔑的なことを口にしたりして著者も感情的に反感を募らせる。
父が亡くなってからパソコンの整理をしていて「嫌韓」のファイルを見つけてから違和感が強くなり、父の死後2ヶ月で『亡き父はなぜ「ネット右翼」になってしまったのか」という記事を書く。
本書はそれ以降2年をかけて、父が何に影響を受けてネット右翼になったのか、本当にネット右翼だったのか、そもそもネット右翼とは何なのかを探っていく。
実家に帰ったら親が右傾化していたという話しは時折ネットでも見かけるがその理由まで深掘りしていることはほとんどない。著者は記事を書いたけど父親のことを本当に理解していたのか疑問に思い考えを巡らせ、父と親しい人の話しも聞き検証していく。
読んでいくとわかるのはこの本は70代の父親と距離感のある40代の息子が父親の実像に迫っていく過程だ。ルポというよりエッセイ。
右傾化した父親についての統計やデータはないだろうから実体験を語るのは誠実なことだ。
ただ新書は現代の問題などを簡潔にまとめる本というイメージが未だにあるので望んでいたテーマとちょっと違う本だった。
ここ10年エッセイ寄りの新書が増えてるけど単行本だと高くて売れないから時事的なテーマは新書で出そうと出版社が考えてるようだ。それって昔のイメージで新書を捉えてる人が新書を敬遠するようになりそうで悪手な気がする。
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