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    xiangyu(シャンユー)「ときどき寿」

    CATEGORYBook




    本屋の邦楽ミュージシャンコーナーで見かけた一冊。
    xiangyu(シャンユー)「ときどき寿」
    帯に「音楽アーティストxiangyuが綴る、横浜のドヤ街・寿町に住む"ヤマさん"との6年に及ぶ友好の記録。」とあり購入。
    検索してみたら本名がアユミなので鮎の中国語表記を名前にしたそう。
    音源を聞いてみるとテクノぽい音でヒップホップのビートも入っているエレクトロニカ。南アフリカ発祥の音楽Gqom(ゴム)を洗練した感じだ。そこに話しかけるようなラップや歌がのっている。調べたら音は水曜日のカンパネラのチームが作っている。最近の曲と比べたら音色も音の広がり方も同じだった。他のトラックメイカーよりずば抜けている。
    xiangyuはもともと音楽には興味がなくカラオケも行きたがらないタイプだったそう。
    文化服装学院で服作りを学んでいて展示会に出品したら歌ってみないかと声をかけられた。ただ歌うと決めるまで数年かかった。
    寿町とのつながりはまだ歌を歌い始める前、服の絡みで知り合った編集者から寿の炊き出しに誘われたという。
    もともと高校生の頃に自分の貯金で東北へ震災後のボランティアに通っていたから合うんじゃないかと思われたそう。
    寿町は日本を代表するドヤ街のひとつ。この辺りはいろいろな事情があり撮影禁止だからテレビなどでは放送されない。僕も90年代始めに夏のお祭りで行われるフリーコンサートに行ったがその頃は町も汚く危ない雰囲気があった。2010年代に2回行ったらずいぶん綺麗になっていた。xiangyuが訪れたのもその頃だろう。
    寿でも1番仲の良くなった"ヤマさん"との交流とxiangyuの自伝的なエッセイが綴られていく。
    ドヤ街を取り上げていても社会学や学術的な分析とは無縁でボランティアの人が内心寿の住民を可哀想と思ってるんじゃないかとか、「路上生活は怠けた結果じゃないというけど本当にそうなのかなとか立場や言葉に惑わされずに素直な気持ちが書かれている。意外とこういうのは珍しいかも。帯には「実録ルポエッセイ」とあるけどそんなに堅苦しいものではない。
    寿は他人の過去を詮索しない場所だし携帯も持っていない人もいる。著者にとっては社会の目から離れて自分を出せる場になっているようだ。
    モラトリアムではあるけれど息苦しい世の中で息を抜ける場所があるのはいいことだと思う。
    本屋に行かなければこの本には出会わなかっただろう。でも読者目線からすると、音楽ではなくエッセイやノンフィクション、サブカルチャーの棚に置いてある方が手に取る人が多いような気がする。表紙のピンクの模様をなんなんだろうと思ってたら読んだらわかった。
    この本で気になったらxiangyuの音楽も聞いてみるといい。曲名は「風呂に入らず寝ちまった」「プーパッポンカレー」「ミラノサンドA」など。PVでは著者が作った服を着てるものもある。

    最後に、この本を読んで安易に寿町に行ってみようとは思わないこと。寿に住む人にとっては寿だけが大事な生活の場なので、何もつながりがない人が行くと冷たくあしらわれるし攻撃的と見える対応をされても仕方ない。
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