阿部和重 「ULTIMATE EDITION」
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2022年も10月になってあることに気がついた。
こんなに本を買ってるのに小説はクラリッセ・リスペクトルの「星の時」しか読んでいない!
あとはセリーヌ「夜の果ての旅」、クノー「地下鉄のザジ」、12月に入ってからブコウスキー「郵便局」も読んでるけど新訳や復刊だ。
それでちょうど読み出したのが日本の阿部和重10年ぶりの短編集「ULTIMATE EDITION」。
この10年での16作品が収録されている。
ロシアの暗殺者から始まりポケモン、ナワリヌイ毒殺、シリア空爆、金正恩、ボルソナロ、嵐、A,B,C-Z、赤ちゃん泥棒、詐欺の受け子、イーロン・マスク、車両窃盗、ジョーカー事件、ベトナム人実習生といった現実を題材にとった作品が並ぶ。
前半は内容が凝縮された短編が多く読むのに時間がかかってしまった。逆に後半はページ数は多めでも日本を舞台に物語性のある読みやすい作品が並んでいる。最後の作品は「ニッポニア・ニッポン」のアップデートみたいだった。
落ちのある短い話よりは長編を切り取ったような映画的な作品が好みだった。
各タイトルは実在する曲名に由来している。なのでベスト盤の意を込めて「ULTIMATE EDITION」。
題材を見れば分かる通り災難が降りかかってくる展開が多い。
「星の時」を読んだ時、主人公が理不尽な運命に翻弄されるのが阿部和重の「ミステリアス・セッティング」に似てると思ったので2022年は実質同じような小説を2作読んだだけとも言える。
内容はふさわしくないけど表紙は金箔で元旦に相応しいか。
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