厨房で見る夢
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2010年代になってからどこの駅の周辺にもインドカレー屋が大量に開店してるのが気になっていた。しかもそんなに美味しくないところが多い。インドカレー屋だけど実際に働いているのはネパール人だと耳にし、実際ネパール料理も出している店が増えた。
そんな疑問に答えてくれそうな本「厨房で見る夢」を見つけた。
臨床心理士として日本で勤務していたネパール人が在日ネパール人について書いた本だ。
来日するにはよく話題になる教育実習生とかいろんな資格がある。そんな資格の一つに「技能」があるのを初めて知った。特別な技能を持っている人が日本に滞在できる制度だという。
インドカレー屋にはナンを焼くタンドール窯がある。ナンを焼くには専用の釜が必要なのかなと思っていたが、タンドール窯でナンを焼けるのが「技能」の1つに認められているから設置しているというのが実情らしい。
調理経験が10年以上あれば技能の優劣の判断なしに来日できるそう。そこで調理経験がなくても仲介屋に150万ほど払えば来日できてしまう。
ネパールの貧困は深刻で国民総生産の2割を海外からの送金、つまり仕送りが占めているそう。なので大金を払ってでも海外に行きたい人はいる。
経験もないのに技能が必要とされるタンドール窯を使うから火傷だらけだそう。
しかも日本に来てもコックとしての給料は8~10万ほどらしい。でも雇い主は国への書類に技能に見合った25万円くらいを払っている形を取っているそう。それでどうなるかというと社会保険料が8万ではなく25万の基準になってしまう。保険料を滞納していざ病気になった時に保険証が使えなかったりする。
また在留資格の延長のためにコックが雇い主に30~50万ほど毎年払うそう。インドカレー屋はやたらと厨房に人がいるなと思ってたら仲介の仕組みが出来上がっていて従業員がいればいるほど雇い主の収入が上がるようになっている。そして貧困から這い出るにはなんとかお金を貯めて自分が経営者になって従業員を搾取するしかない。そして店はどんどんできるという訳だ。
コックの給料だと生活できないけど技能だと家族の帯同が可能なので奥さんが働いて家計を支えているそう。当然ネパールとの違いで病む人も多い。
いろんな実例が挙げられているけどやっと全体の仕組みがわかった。
この仕組みと無縁の臨床心理士だから聞き出し書き残せたことだと思う。でも著者はネパールに帰国してしたらしい。日本のネパール人のメンタルを診てくれる人が減ってしまった。
2022年3月刊行で7月に2刷りが出ている。発行が上智大学出版なので教科書に使われてるのかな。いずれにせよ多くの人に読んでもらいたい本だ。
原題は「チーズナン 在日ネパール人コックの希望と葛藤」。チーズナンはチーズを練り込むのも焼くのも難しいそう。チーズナンはトゥーマッチな感じがして頼んだことないけどこれからも頼みづらいな。
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