植本一子「7月の2日間 わたしのすきな家族」
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写真家植本一子が写真展を開くにあたって「家族写真」を撮ろうと思い立ち、京都の書店メリーゴーランドを訪れる。
その2日間を記録したのが植本一子「7月の2日間 わたしのすきな家族」とメリーゴーランドを経営する夫婦、鈴木潤と扉野良人による「7月8日9日 一子と」。
植本一子と鈴木潤は往復書簡の連載もやっていたけど実際に会うのは2年ぶり、3回目。夫と子2人に会うのは2回目。しかも訪問当日は元首相の銃撃事件が起きた日。
2日間の出来事や銃撃事件への思いや考えが3者3様でこうも違うのかと思わされる。
そして3人の文章を読み比べることで植本一子の著書、ほとんどが日記を読み続けてきた理由もわかった。
元々植本一子の名前は、ラッパー故ECDの歳の離れた奥さんが「働けECD~わたしの育児混沌記~」を出版したと知った時だ。タイトル通りECDや幼い娘2人との日々が綴られている(家計簿付き)。
次に出た「かなわない」が話題になり読んでみようと思った。日記にエッセイ二編が収録され、そのエッセイの文章が強烈な感情を淡々と描いて印象的。
その後の「家族最後の日」「降伏の記録」「台風一過」はECDの癌罹患が発覚してから亡くなるまでの日記。
今は個人出版も手軽になり書き手も多い。日記専門書店なんてのもある。さわりだけ読んでみたりするけど植本一子のように読んでみようと思えるものは見つからない。他人の日々の生活をのぞき見るような後ろめたさを感じる。
植本一子に対してもそう感じることもあるけど、日々のことより植本一子がどう感じて考えたかに興味がある。
特に「かなわない」以降は本人の気持ちのカウンセリングとして文章を書いているように感じる。日記というよりエゴの少ない私小説といってもいいくらい。
自分以外の人がどう感じてどのように考えるか、それを知りたくて読んでいるのだと思う。人間は忘れる動物だからその時感じで考えたこともすぐに忘れてしまう。他人の書いた文章を読むことで自分が似たような状況で何を考えたか自分ならどう考えるか思いを巡らせるきっかけになってるのかもしれない。
植本一子の文章に興味が出たら「かなわない」をまず読んでみるといい。苦手と感じるかこの後も読んでみたいと思うかはっきり分かれる。
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