町田康「私の文学史 なぜ俺はこんな人間になったのか?」
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町田康がTwitterで新刊を紹介していて目を疑った。タイトルが「私の文学史 なぜ俺はこんな人間になったのか?」というものだったから。
自分のことについて書くような人だったかななんて思いながら読み出したら冒頭でそのことを説明していた。いわく自分語りはみっともない、と。
今回たまたま講演という形で依頼があり今までやってこなかったからやってみようと受けたそう。
以下、本との出会い、歌手・詩人・小説家・創作・芸能・エッセイ・古典などについて語られていく。
多様な話題に触れるなかで著者の傾向がわかってくる。自分に正直になるということと熱狂から遠ざかることだ。
集中して一つの物事を考えながらもそのことを客観視しながら冷静に俯瞰している。
町田康の文章の面白さに細かいことへの集中とそこからの逸脱による解放感があるけどこの語りでもそのことがよくわかる。
町田康が何を考えながらものを作り出しているか知りたい人には格好の一冊。もちろん人前で語っていることだから難しいことを考えずに読んでも面白い。
ただし自伝ではないので人生の細かいエピソードなどはあまり語られないので注意。
町田康が「くっすん大黒」を出版したのが1996年。でも音楽を聴き始めた1989年くらいには町田町蔵という奇っ怪な名前は目に入ってきた。その頃はサブスクどころかネットもないしすぐに聞ける状態ではなくバンドINUの「メシ喰うな!」を聞いたのは1994年だったか。
初めて町田町蔵の歌声を聞いたときに思ったのは「大槻ケンヂの歌い方のルーツはこれか」というものだった。まあこれは極端で他は普通に歌っている。
町田町蔵は4枚CDを持ってるけどこうやって見るとジャケにバンド名やタイトルを入れたくないのかな。色も名義もバラバラだ。
黄色いジャケが1番有名なINU。
白いのが町田町蔵+北澤組「駐車場のヨハネ」、赤いのは町田康+ Glory「どうにかなる」、青いのは町田康「脳内シャッフル革命」。
INUを聞く前に何かの雑誌でエッセイを読んでこの人文章を書ける人だなと思った。南方熊楠の映画の主演をやる予定だった頃。その後朝日新聞の広告で「くっすん大黒」の出版を知り発売日に買いに行ったな。単行本の初版は今も家にある。

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