クラリッセ・リスペクトル「星の時」
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2020年で生誕100年を迎えて再評価されているブラジルの作家クラリッセ・リスペクトル。すぐ読もうと思いつつ発売されてから1年経ってしまった。
でも今読んだのは2つの点でタイミングが良い。まずクラリッセがウクライナ出身でロシアのユダヤ人迫害から逃れて生後すぐ1922年にブラジルへ渡っていること。ロシアのウクライナ侵攻は今に始まった話しではなく100年も前から続いていることだとわかるし、去年読んでたらウクライナ出身というのは気にしてなかった。むしろブラジルの作家ということで興味を持ったので。
そして今日、本書が第八回日本翻訳大賞に選ばれたこと。
「星の時」は1977年の遺作。ロドリーゴという青年がマカベーアという貧しい少女の生い立ちから社会での生活を描いていく構成になっている。
ブラジル北東部に生まれながら幼くして両親を失い叔母に育てられたマカベーアはリオに移り住み、叔母は早々に亡くなってしまい1人で生活していくことになる。
というと苦難を乗り越え明るい未来を勝ち取っていく話になりそうなんだけどそうはならない。しかもマカベーアには自分が不幸だと認識することもできない。
マカベーアの話しとは別に書き手のロドリーゴの意見や考えも出てくるのだけどマカベーアの人間性を否定するようなことばかり。マカベーアのことなど書きたくないとまで言っている。
作中マカベーアが恋をする相手の言葉や態度もひどい。
文書は簡潔でわかりやすいけどこれは何度か読まないとわからないタイプの本だ。なんとなく1977年だとピンと来ず1920年代に書かれたような古典感がある。
分析的に読んじゃうとつまらない。自分が読んでいて気になったのは、ロドリーゴが語る形式、マカベーアの生い立ち、「星の時」というタイトル。この辺りがポイントかな。
不幸な女性を笑い話的に書く小説というとガルシア=マルケス「エレンディラ」とか山田宗樹「嫌われ松子の一生」がある。とことん不幸、なんなら登場人物にイライラするというと阿部和重の「ミステリアス・セッティング」を思い出した。
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