五所純子「薬を食う女たち」
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すぐ読む気だったのに奥付見ると2021年6月の発行。ほぼ1年経ってしまった。
サイゾーで連載されていた「ドラッグ・フェミニズム」というドラッグにハマったことのある女性へのインタビューを元に、インタビュアーであった五所純子が小説として再構築した「薬を食う女たち」。
第1話はいかにもインタビューといったかみ合わない対話。2話は2人に話しを聞いたのか著者は第三者の視点で書いている。ここまでは客観的な感じだった。
何事にも受身な女の子が出てくる3話から著者が本人の気持ちになって一人称で語られる。ここからが読む方としてもバッドトリップを強いられるようでかなりきつい読書体験だった。
12話収録されていてある程度パターンが見えてくる。姉か兄がいて自分は親にかまってもらえないとか、両親がうまくいってなくて家に居づらいとか。自傷癖がある。地方だと友人や知人から、都市だとネットつながりで10代のうちからアルコールや大麻、覚醒剤、性産業にハマっていく。心のバランスを崩して心療内科に行くと過剰に薬を処方されたり医師にモラルがなかったり。施設に収容されたり逮捕されたり。
インタビューだと過去のこととしてある程度は客観的に語られているのだろうけど、時系列に体験を言葉にしていくと痛みが強い。心が揺れやすい人には劇薬になりそうな本だ。
ずっと読んでいて最後の章で知っているラッパーが母について語っていて驚いた。本当にインタビューしたんだな。サイゾーなんてライターの捏造記事もあるんじゃないかなんて思ってた。これは元のインタビュー記事も読んでみたい。
著者はこれが初の単著。中原昌也の小説をリミックスした「虐殺ソングブックremix」にも寄稿してるそう。家のどこかにあるから見つかったら読もう。

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