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    田中小実昌「ふらふら日記」

    CATEGORYBook


    学生の頃、高橋源一郎の書評集「文学がこんなにわかっていいかしら?」で名前を見てから読んでみたいと思いつつ読んでなかった田中小実昌のエッセイ集「ふらふら日記」が文庫で発売された。
    1987年の発売以来、初の文庫化らしい。エッセイだけどまずは読まねばと読んでみた。

    初出が載っていないから詳細は不明だけど雑誌や新聞での連載3つをまとめたようで3部構成になっている。いずれも旅や住んでいたところにまつわるエッセイだ。
    最初の1部は1話毎の文章量が少なめで内容も思索的。30~31と33ページを読んでおっと思った。今の時代、解説やまとめはわかりやすく要約してあるのがいいみたいな風潮が強くなっているし、物語でさえスピード感のあるもの、答えがあるものが求められている。でもこの本は違う。ゆっくり読まなきゃいけない。
    まあこれも自分がそう感じただけで読み方は自由だ。特に2部3部は軽い旅行記なので読み飛ばすこともできる。
    ふらふらといっても国内を出歩くだけでなく、夏と冬は日本を出てアメリカ、オーストラリア、イギリス、スペインなどノープランで出かけて長期滞在していた様子も書かれている。そしてどこの土地でもバスに乗っている。終点に来たらまた別のバスに乗る。これがスマホどころか携帯電話もない昭和の1980年代のことなのでどこへ行くのか、戻って来られるのかハラハラさせられる。今の旅行記では味わえない感覚だ。
    田中小実昌は戦争経験者だし父親は有名な牧師だ。それも周囲と軋轢を起こして土地や教会を転々とする。そういう状況だったから悩むこともあったのかなとも思うけど、そんなことは構わずひょうひょうと旅に出る軽やかさがある。
    文章もシンプルながら結局読むのに時間がかかってしまった。テキ屋の見習いをやってた頃のエピソードや、海外での自炊の話しが面白い。

    さっき「文学がこんなにわかっていいかしら?」を読み返してみたら「アメン父」の1ページ目を読んでこの本はゆっくり読まなきゃいけないと思ったと書いてあり、そういう読み方が合っている作家なんだなと思った。小説も探して読まなければ。



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