ジョン・ウォーターズの地獄のアメリカ横断ヒッチハイク
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合間に他の本を読んだりしてやっと読み終えた。
カルト映画監督であり悪趣味の帝王であるジョン・ウォーターズが66歳にしてヒッチハイクでアメリカを東西横断した記録「ジョン・ウォーターズの地獄のアメリカ横断ヒッチハイク」。
ブロードウェイでミュージカルが上演され、ジョン・トラボルタ主演で映画もリメイクされた「ヘアスプレー」が今では1番有名かもしれない。
でもジョン・ウォーターズといえば肛門が歌い、太ったオカマが犬の糞を食べるシーンのある「ピンク・フラミンゴ」が長らく代表作だった。この映画の影響は遠くマツコ・デラックスにも及んでいる。「ディヴァイン」で検索するとわかる。
そんなジョン・ウォーターズでも2008年のリーマンショック以降は予算の都合上映画が撮れなくなってしまった。
そんな中でやってみようと思ったのがボルチモアの自宅からサンフランシスコの別宅までヒッチハイクすること。元々60年代はヒッピーでヒッチハイク経験はあったらしい。
それで出版社に企画を持ち込んだらすぐに出版の前払い金ももらえたそう。なので逆に実行しなければならない。
60年代と違い今はハイウェイでヒッチハイクすることは禁止されている。どういう人に出会うかもわからない。そこでヒッチハイクの旅に出た時の最高と最悪のパターンを考え出し短編小説にする。
本書はその最高と最悪のパターンと実際の旅を加えた3章仕立てになっている。
最高と最悪の章は面白いんだけどジョン・ウォーターズのゲイとしての妄想が爆発している。
最高の章に俳優のジョニー・ノックスヴィルを主演に映画を撮るプランが出てきて、お下劣ドッキリスケボードキュメント、ジャッカスの主演を使うするなんて流石すごいなと思ったが、これ顔が好みなだけかもしれない。
ターミネーター2の子役、エドワード・ファーロングが歳をとって落ち目になってから主演に抜擢してるんだけど顔のタイプが似てる。
最高と最悪のフィクションを終え、ノンフィクションとなる3章はヒッチハイクしようにも中々車が止まらない現実が続く。
出発地のボルチモアはすぐ顔バレして順調なんだけどその後は厳しい。
そんな中、3日目にHere We Go Magicというバンドがツアー中にジョン・ウォーターズを拾い、SNSにアップしてから流れが変わる。旅をしていた2012年当時、自分もそのことを知ったくらい報道などが出てホームレスや単なる変人ではないという証拠が増える。
車に乗せてくれる人は3等分され、ジョン・ウォーターズを知らない人、拾ってから気づく人、知ってる人で、SNSで拡散されてからは最後の人たちが増えて楽になる。
Here We Go Magicなんて一度通り過ぎてから本当にジョン・ウォーターズか確認しに戻ったくらいだから有名であることは重要だ。
でも拾ってくれる人は基本的に労働者階級の人で話好き、さらに奥さんのことを褒める人たちばかり。リベラルなジョン・ウォーターズと違い共和党支持者も多い。日本にいると共和党支持者なんて頭が固くて人種や性別に対して差別的で何も考えてないような人に感じられるけど実際に触れ合うとそんなことはない。日々働く真面目な人たちばかりだ。そういう人と出会えたことがセレブの1人であるジョン・ウォーターズにとっても良い機会となったのだろう。
初日に出会い、後で追いかけて再度乗せてくれるのが20歳の町会議員で共和党員。60代でフリーランス、リベラルのジョン・ウォーターズと真反対な人だというのも面白い。
アメリカは若い国で文化的に国内をさまよって旅をする話しが多い。その伝統にカルトで悪趣味なジョン・ウォーターズが新たな名作を残したのは感慨深い。
もしこの本が映画化されたらジョン・ウォーターズ役はスティーヴ・ブシェミだろうな。よく間違えられるらしい。
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