謎ときサリンジャー 「自殺」したのは誰なのか
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本屋で目についた新潮新書『謎ときサリンジャー 「自殺」したのは誰なのか』。
『ライ麦畑でつかまえて』で知られるアメリカの作家サリンジャー。ライ麦畑のヒット後、1950年代半ばから世間を離れた隠遁生活を続けたことでも知られている。
グラス家の6人兄弟をめぐる短編も数編書いていてその中でも短編集『ナイン・ストーリーズ』冒頭を飾る「バナナフィッシュにうってつけの日」が印象的なタイトルと内容で有名。
グラス家の長男シーモアの妻とその母との会話から始まり、若い男の話しに変わると最後に理由もなく自殺するという話し。
この文庫で20ページちょっとしかない小編を他の作品も参照しながら自殺の謎について読み解いていく論考だ。
実は自分もアメリカ文学を専攻してたのでバナナフィッシュを読んだとき後半に登場する男性が「若い男」とか彼とか呼ばれて名前が明記されていないことが気になっていて、作者の自殺願望を投影してるのかなぐらいに思っていた(実際のサリンジャーは91歳の大往生)。
この論考では禅や俳句、時間の概念なども交えて真犯人を探っている。
サリンジャーはライ麦畑なんてジュブナイルと言ってもいいくらいナラティブで読みやすい文章を書く人なのだけど様々な技巧や伏線を凝らしているのだなと改めて思った。そしてここまで深く読み込めるものなのかとも。
本編を読み終わってあとがきを読んでたら「若気の至りとしか思われない1998年の拙著」という文が出てきて思い出した。同じ著者による「『ライ麦畑でつかまえて』についてもう何も言いたくない」も読んでいた。

日本では荒地出版社から短編集の翻訳が刊行されていた。その同じ出版社から出ていた論考だ。しかしもう23年前か。
サリンジャーは1965年以降作品を発表していない。日本は恵まれていて本国アメリカでは短編集も本として出版されていないから読むには図書館でニューヨーカーなど昔の雑誌を探すことになる。2011年に亡くなってから未発表作品が公開されるという噂はありながらまだ実現していない。
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