サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)
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映画「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」を見てきた。
ウッドストック・フェスティバルの2ヶ月前、1969年の6月から8月の日曜にハーレムの公園で6回にわたり行われたハーレム・カルチュラル・フェスティバルの映像が50年埋れたままだったのをルーツのクエストラブの手によって公開された。
そんなフェスがあったのも初耳だったので公開されたら見たいと思っていた。でもそもそもクエストラブは1997年に初めて来日した時にソウルトレインカフェでこのフェスの映像を目にしてたそうなのでソウルファンには知られているのかも。
で、見てみたらこれは音楽ドキュメンタリーとして傑作だった。
言いたいことが多くて長文だけど映画を見るまで内容を知りたくない人は以下は読まない方がいいかも。
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本家のウッドストックの映画みたいに余計なナレーションはなしで演奏メインだといいななんて思ってたのだけどそこはいい意味で裏切られた。
ニューヨークのハーレムなんて住むのは黒人がほとんどの場所。そこでフェスをやる成り立ちや経過が詳しく語られ、当時のハーレムはじめ黒人にまつわる映像も豊富で音楽だけじゃなくブラック・ヒストリーも辿るドキュメンタリーともなっていた。
1969年というとマルコムXもキング牧師も暗殺され黒人活動家が先鋭化されていた時代。ベトナム戦争には多くの黒人が駆り出されていて黒人の政府に対する信頼が崩れていたからこのフェスでも警備は警察に頼まずブラック・パンサー党が行ったそう。
都市の公園だからか4~6万人集まってる割に治安がいい。ウッドストックと比べると天地の差だけどこれは日曜の昼だけの開催だったからかも。なぜ昼だけかというと照明の準備をする予算がなかったから。
映画はスティーヴィー・ワンダーから始まるんだけど歌の途中でドラムソロを叩き、ブレイク後にモータウンのバンドが演奏を再開してタイトルクレジットが出る時点でもう最高。
カルチュラルというくらいなのでいろんなジャンルの人が出る。ブルース、ジャズ、アフロサウンド、ソウル、ポップス、果てはコメディアンもちょっと紹介される。
ゴスペル・デイは特に時間を使っていてOh Happy Dayのエドウィン・ホーキンス・シンガーズ、ステイプル・シンガーズ、マヘリア・ジャクソンなど錚々たる顔触れ。ポップス・ステイプルズのカラー映像は初めて見た。
ジャズはハービー・マン(バックにロイ・エアーズ)、アビー・リンカーン&マックス・ローチなど。
モンゴ・サンタマリア、ヒュー・マセケラも登場し、レイ・バレットがハーレムのプエルトリカンを代表して出ていてファンキーなTogetherを演奏してるのも良かった。
黒人から白人ぽいと認められていなかったフィフス・ディメンションはこのフェスに出られたのが嬉しかったようで演奏にも時間を取ってある。
60年代全盛期のモータウンからはスティーヴィーとテンプテーションズを脱退したデビッド・ラフィン、グラディス・ナイトの3組。内前2者のベースはジェームス・ジェファーソン。構えが独特なので間違いない。最近のスティーヴィーのインタビューが流れるんだけど声が若々しい!グラディスナイト・ナイトは絶好調。
B.B.キングとか名前を挙げてない人もいてお腹いっぱいのところにニーナ・シモンが出てきたのだけどこれが圧倒的。ドレスもイヤリングもお洒落。
スライはこのフェスで1番人気で途中2曲流れたのだけどナレーションが被っていて残念。と思いきや最後にも一曲流れた。スライはウッドストックより調子良さそう。シラフだったのかな。そしてウッドストックのスライのライブが良かったのはこのフェスを経験してたからかもしれないと思った。
人種への偏見が強かった時代に黒人が企画してほぼ黒人だけの聴衆を目の前にして演奏者はみんな嬉しそうだ。会場もポジティブな雰囲気に包まれているからパフォーマンスも良くなったんだろう。
Huluが協賛についてるからかダレてるところがない。出演者のアナウンスからすぐ演奏が始まったり編集に手がかけられている。本家のウッドストックはダラダラ映像流してたからそこは違う。
当時の黒人のファッションも人それぞれ。ファストファッションもない頃だから個性豊か。
音と映像の修復には手をかけたそうなので音が良かったから映画館で見るのがおすすめ。
今回初めて横浜NEWoMENのTジョイ横浜に行ったら8~10の3フロアの1.5階分を使って10シアターも稼働していた。受付の上が空くから9階には広いラウンジがあるし座席前後の通路も広く取ってあるし(これはドルビーシアターだったからかも)で今までで1番快適な環境だった。席を間引いて半数しか入れないから売上は大変なんだろうな。
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