岡崎京子「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」
CATEGORYBook

バンド東京初期衝動の初映像作品のタイトルが「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」で岡崎京子だ、と気づいたのだけど、買ったまま読んでなかった本が家から発掘された。
岡崎京子は1990年代を代表する漫画家。元々は雑誌のコラムにイラストとか書いてたのが4コマになり漫画家となっていった。1994年刊行の「リバーズ・エッジ」から時代を先取りするような作品が増えてこの先どうなるんだろうなんて思っていた矢先、1996年5月に轢き逃げに遭い、以来入院を余儀なくされる。リハビリを続けて何年か前には小沢健二のライブに姿を現したそう。近年、ヘルタースケルター、リバーズ・エッジ、ジオラマボーイ・パノラマガールが映画化されている。
「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」 は2004年、もう17年前に出版された岡崎京子唯一の文章による物語集。
PRちくまに1995年1月から1996年4月号まで掲載。男女の痴話喧嘩や寓話をアレンジしたものなど。どの話しも暴力の気配が漂う。
1995年というとバブルが崩壊したあとで阪神淡路大震災やオウムの事件があり世紀末に向けて不安な緊張感みたいなものがあった。これは1997年の酒鬼薔薇事件にも通じてるように思う。
リバーズ・エッジ、私は貴兄のオモチャなの、ヘルタースケルターなどは特に時代の空気を捉えていた。作品自体はおしゃれでも電波系、鬼畜系に片足突っ込んでるような。
多数の連載を抱えながら文章にも挑戦したのだからすごい。結果として1996年5月に事故に遭い連載が中断された。
漫画版のヘルタースケルターが1996年4月号で連載が終わっていて、単行本になったのが2004年。ずっと読みたいと思っていたのになかなか単行本にならなかった。陰惨でカルマに溢れた内容で、この作品を書いたことが事故につながったとか考えて単行本を出していなかったのかなと思った。
2004年にこの2冊を出版したのは事故から8年、少しは事故当時のことも考えられるようになったのだろう。
今もリハビリを続けているようだけど、事故に遭わないまま漫画を描き続けていたらどんな作品が生まれていたんだろう。
本のカバーは型押しの品のあるもので、カバーを外すと花のアップの写真が使われている。写真家のクレジットはなし。デザインは祖父江慎。


- 関連記事
-
- 最近買った本 (2021/06/26)
- 岡崎京子「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」 (2021/06/22)
- 昭和50年男の音楽特集 (2021/06/20)